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★☆★☆★【青工会メールマガジン 第146号(2013/11/7)】★☆★☆★
　　　　　　　　　≪平成２５年度　第８号≫　　　　　　　　　　　
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 秋、真っ盛りです。紅葉も見どころを迎えております。

たまには忙殺の日々から逃れて、紅葉狩りなど嗜みながら子供たちと手
を繋いで秋の小路をのんびりと散策したいなぁと思いつつ、今が書き入
れ時のためせっせと仕事をしている状況です。

それはともかく、この時期は癒しの季節でもありますので、皆さんも思
う存分秋を堪能してください。

あ〜癒されたい・・・。
いかんいかん、つい個人的な心情を書いてしまいました、スミマセン。

それでは、気を取り直して、
青工会メールマガジン、平成２５年度　第７号スタートです！

                                                 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　照山可純

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【今月のメニュー】
　◆会長より　ご挨拶　　　　〜　乾会長より
　◇１０月例会　ご報告　　　〜　経営力委員会　　　水地寛樹委員長
　◆１１月例会　ご案内　　　〜　ものづくり委員会　渡辺立哉委員長
　◇リレーコラム　　　　　　〜　齊木啓介会員
  ◆新企画第二段「人生のターニングポイント」
　◇「模擬裁判　その後」　　〜　総務委員会　　　
　◆編集後記
 
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　　　　　　★〜〜〜　会長よりご挨拶　〜〜〜★
　　山梨青年工業会　平成２５年度　第４２代会長　乾　亘　
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少し前までは暑いと言っていたのに、１１月に入り本来の秋のらしくな
ってきましたね。
先日、久しぶりにゴルフに行ってきましたが、周りの山々も紅葉が進ん
でいてとても綺麗でした。
それにしても１０月に来た２つの台風は凄かったですね。皆様の会社は
大丈夫でしたか？
私の工場はだいぶ老朽化が進んでおり、１つ目の台風で南側の壁の一部、
２つ目の台風では北側の壁の一部が破損してしまい、現在業者に修復を
依頼しています。
山梨は比較的自然災害が少ないのですが、安心せず準備を怠らないよう
にしなければなりませんね。

１０月例会は講師に峰岸先輩をお迎えし「リスク管理出来てますか？」
をテーマに開催されました。
講義内容は経営者、リーダーとして先ほどの自然災害の事も含め、常に
色んなリスクがある事に気付き、
向き合い、事前に対応して行かなければならない事の大切さを学びまし
た。
委員会に何回も参加頂き、準備、講義頂いた峰岸先輩、そして水地委員
長率いる
経営力委員会の皆様、ありがとうございました。

１０月２５日には「横内知事との膝づめ談義」が甲府商工会議所で開催
されました。
参加人数の関係で役員会対象で行われましたが、当日は設定時間を大幅
にオーバーするほど
横内知事との活発な意見交換がされ、今後の山梨県政についても知事か
ら直接伺う事が出来、
とても有意義な時間を過ごす事が出来ました。
参加頂いた皆様、ありがとうございました。

さて１１月例会は「青工会から盛り上げよう！山梨テクノＩＣＴメッセ」
をテーマに開催されます。
現在渡辺委員長率いるものづくり委員会メンバーが「今までにないブー
ス展示」また次世代を担う子供達に
ものづくりの魅力を充分伝えられる「親子ものづくり体験教室」にする
べく準備しています。
体験教室についても１００組の定員をオーバーするほどの応募がすでに
あります。
会員各位におかれましては、大切な会全体の対外事業となる１１月例会
へのご協力、宜しくお願いします！


□■１０月例会　ご報告　〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
■□──────────◆◇　経営力委員会　水地寛樹委員長　◇◆

　１０月１８日（金）に甲府商工会議所５階多目的ホールにおいて、午
後７時より青工会のシニアでもあります株式会社峰岸商会代表取締役峰
岸一郎先輩を講師としてお招きして「リスク管理出来てますか？」を開
催しました。

問題を解きながら自社や自分のリスクについて学んでいただきましたが、
如何でしたでしょうか？一般的に日本人は「リスク管理」に対しては関
心が薄く、「危機管理」に関しては関心が高くなる傾向があるあり、不
確実な未来に対して先手を打つようなことはあまりしないが、事が起こ
ってしまったら、急速に事態の収拾を図ろうとする傾向があると言われ
ています。

最近食材の偽装のニュースがちまたを賑わしていますが、これも発覚し
た後の事を考えると早めに改善しておくべき事だったのではなかろうか、
習慣に惑わされてリスクを置き去りにした結果はなかろうか。

事の大小では無くリスクというのは出来るだけ無くしていくことが大切
だと思います。
今例会でリスク管理について関心が少しでも高まっていただけたら幸い
です。

最後に、例会を計画していく課程で峰岸先輩には委員会に何度も脚を運
んで頂きありがとうございました。会員の皆様、委員会の皆様のご協力
のおかげで１０月例会が無事終了できました。ありがとうございました。


□■１１月例会　ご案内　〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
■□───────────◆　ものづくり委員会　渡辺立哉委員長◆

　会員の皆様、こんにちは。ものづくり委員会の渡辺立哉です。
１１月例会「青工会から盛り上げよう！山梨テクノＩＣＴメッセ２０１
３」ということで、１４日（木）〜１６日（土）の３日間、山梨テクノ
ＩＣＴメッセ２０１３に出展し、青工会・会員企業のＰＲを行います。
　
　最終日１６日（土）には５０組１００名の親子を迎え、親子ものづく
り体験教室を開催いたします。
　体験教室をメインに集客を行い、青工会から盛り上げ、活気ある山梨
テクノＩＣＴメッセ２０１３にしましょう！飛行機づくりを通じて、子
供たちにものをつくる楽しさを体験してもらい、ものづくりの大切さ伝
えていきましょう！そして来場者には青工会そして山梨の産業をＰＲし
ていきましょう！
　
　最終日１６日（土）の親子ものづくり体験教室を例会日とします。
１部２部の２回、飛行機づくりを行いますので、会員全員で子供たちに
楽しくつくり、飛んだ喜びを伝え、楽しい時間を作りましょう！
　１４日（木）、１５日（金）についてもご協力いただける方は、青工
会ブースにて来場者への案内、説明をよろしくお願いいたします。
　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　記
１．日時　１１月１４日（木）〜１６日（土）
　　　　　ＡＭ１０：００〜ＰＭ６：００
　　　　　（最終日１６日はＰＭ４：００終了）
　　　　　例会日１６日（土）ＡＭ９：００受付
　　　　　　　　　　　ＡＭ１０：００第１部親子ものづくり体験教室
　　　　　　　　　　　ＰＭ　０：３０第２部親子ものづくり体験教室

２．場所　アイメッセ山梨（甲府市大津町２１９２−８）

３．服装　平服（節度ある服装）青工会ビブス


●○　リレーコラム　〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
○●─────────────────◆◇　　齊木啓介　会員◇◆

田代会員、指名ありがとうございます。
昨年担当していたメルマガにこんなに早く原稿を載せていただく機会が
あるとは夢も思いませんでした。張り切っていきたいと思います。

最近インターネットを通して、花火好きの方と交流を持つことがありま
す。その方たちは本当に花火が好きで日本中どこへでも花火があれば駆
けつけています。写真を撮る人もいれば動画を撮る人もいます。その熱
意はもはや愛といえるものです。

そのおかげで各地の花火大会を見ることができ、全国の花火師の最新の
演出をみることができます。ただ、花火の技術、例えば色は動画を見る
だけでまねできません。もし実物を手に入れてもそこからわかることは
ほとんどありません。それは使っている薬品や、配合比率など、様々な
要素があるからです。

難しいことはさておき、全国の花火大会の動画を見ていると花火以上に
気になることがあります。それはたまたま入っているお客様の歓声です。
花火のどのシーンで歓声が沸くのかはもちろんですが、どんな方なのか
を妄想することが楽しみになっています。酔っ払っている声、若い男性
の彼女？と思われる人への的を外した解説など・・・素敵ですね。人生
を楽しむって。
夏を楽しめない分、春・秋・冬を楽しんでいきたいと思います。もし面
白いことがあれば教えてください！

次回のリレーコラムですが、その人柄が知れば知るほど面白い中川泰徳
会員よろしくお願いいたします。



□■□■□■□■　　「人生のターニングポイント」　□■□■□■□

川崎太会員の「人生のターニングポイント」

 マッチング委員会の川崎です、この度はこの様な機会を与えて頂きあり
がとうございます。

『人生のターニングポイント』というテーマですが、誰にでも必ずある
事ですね。
人との出会いだったり、ある出来事、または自分の体調の変化など、人
それぞれ違う形で経験していると思います。
私はこのテーマを頂いた時に少し悩みました、実は明確なターニングポ
イントが見つからなかったからです。

歴史的な偉人・プロ野球選手・Ｊリーガー・政治家など色々な本を読み、
色々な方と会話をし体験談・苦労話など聞かさせて頂きました、
その方々にはここが”ポイント”という所が必ずあります、その出会い
また出来事などをきっかけに　自分自身が一回りも二回りも成長し、
今いる世界で本領を発揮しています、とても素晴らしく私も参考にして
います。

では、ターニングポイント（Turning Point）とは、転機、変わり目、
分岐点の意味を持つ英語、人生における重大な転換期。（wikipedia）
だそうです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
私は小学生の時、マンガに憧れ車に興味を持ち、Ｆ１のピットクルーの
一枚の写真を見てレースに興味を持ち始め、高校、専門学校とその方向
に進んできました、就職活動ではＴＯＭ’ＳやＴＲＤなどレースの世界
に進みたかったのですが、そこまでの成績もなく県内ディーラーに入社
しました、そしてディーラーに就職はしたもののレースメカニックの求
人広告を見て入社二か月で退職しレースの道に進む事が出来ました（採
用担当の方には大変ご迷惑をお掛けしたと思いますが・・・）
そのレースの世界もバブル崩壊の波をうけ、チームも資金難に、数人の
先輩たちと共にレースの世界から一般の自動車業界に転換しました、そ
して様々な経験をし起業して現在に至っています。、

これを聞くと”ターニングポイント”があるように見えますが、私の中
では違うのです。

レースの世界に入った事、レースから一般の自動車業界に戻った事、様
々な経験をした事、そして起業し現在がある事、これら全ては私が思っ
ていたことなのです。

またこれまで数えきれない方々にお会いしました、今では青工会の仲間、
経営の師と呼べる方、人生の先輩、業界の先生、兄貴と呼べる人、育て
てあげたい後輩、長年の付き合いの同級生など切ってもきれない人達が
増えました、中にはとても私が付き合うにはもったいないような方々も
います、その人たちの発するオーラ、言葉、意味などとてもありがたく、
いつも勉強させられています。

ですがその人達との出会いも私がこうなりたいと思い描いた姿なのです。

理想の自分に少しでも近づけるように、信念を曲げず、良い人達に会い、
学び、努力し、真面目にやってきました、少しずれはありますが私の根
本的な道はずれていないと思っています。

なので明確な転機、変わり目、分岐点が見つかりません、しかしこれは
私はとても残念な事だと思っています。

人はその分岐点を把握し自分で軌道修正していきます、私にはそれがは
っきりわかりません、転機などはあったと思うのですが　それがターニ
ングポイントだというと違う気がします、
ターニングポイントは私の中では転機・分岐点の予測がつかない出来事
・出会いだと思います、だとすれば一つだけ思い当たるのが　あの『東
日本大震災』です。


この出来事は誰にも予想できるものではなく、全ての人の生活が突然変
わりました。

テレビで流れたあの映像を見た時に誰もが家族の安否を気にしたと思い
ます、電話をかけても繋がらない状況が何時間続いたでしょうか、仕事
を早めに切り上げ自宅に帰り、家族が揃っている事の嬉しさは生きてき
た中でここまでの感情があったでしょうか、あの日以来　家族の大切さ
を身に染みて感じた日はないと思います。

その日以来　余震が幾度と続き　夜も寝られない日がありました。その
時私はサラリーマンで仕事人間でした、会社に１２頃まで残り資料など
作り、一人でも夜中まで仕事していました。しかしその日を境になるべ
く自宅に早く帰り、家族と一緒に過ごすようにしました、また家族も数
日間余震がきても父親がいる安心感があるようで震災時と比べ徐々に不
安はなくなってきました。

私が『人生のターニングポイント』と挙げるのであれば　やはりこの出
来事だと思います。予想も準備もしていない出来事から色々な事が変わ
りました、景気もそうですが、家族、仕事、などまさしく人生に置ける
転換期です、私は仕事に対する気持ちが変わりました。今まで自分自身
の目標・夢の為でした、達成したら家族が喜ぶと自分中心でしたが　
３・１１以降　”家族あっての自分”に変わっています。
家族の大切さにあらためて気づき　今まで自分自身の目標だったものが　
家族を含めての目的に変わっています。

色々と書かせて頂きましたが、私が思う『人生のターニングポイント』
はこの出来事です。まさに突然気付かされた私自身の転機・変わり目・
分岐点であり、家族に対する思いだけではなく　仕事への打ち込み方、
社員に対しての接し方などが変わってきました。これは自分自身の進む
方向に変化が出てもこの事だけは変わらずに行きたいと思っています。


ここまで読んで頂きありがとうございました
　　　　　　　　　　　　　　　　　　

東日本大震災におきまして、被害にあわれた皆様には心よりお見舞い申
し上げるとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、深くお
悔やみを申し上げます。
 　　　　　　　　　　　　　


□■□■□■□■　　「人生のターニングポイント」　□■□■□■□

中川泰徳会員の「人生のターニングポイント」

　私のこれまでの人生のターニングポイントは，大学３年生になるとき
でした。
高校卒業後，弁護士を志して金沢から東京へ上京し，「チャラチャラし
た学生生活なんか送ってられない」なんて思いながら，はじめは目標に
向かって燃えていました。

ところが，それが空回りしたようで，１年間のうちに大きな挫折と孤独
を味わいました。友達ができない，お金がない，彼女が他の男性と付き
合っていた，司法試験受験コースの選抜試験に落ちる…。それまで大き
な失敗をしたこともない若者には厳しい現実でした。

私はうつ気味になってしまい，その後の１年間は自暴自棄な生活を送り
ました。バイト先でできた友達と，昼間はパチスロ，夜は麻雀，…空い
た時間でバイト，という呆れるような生活です。大学２年時に単位認定
された科目はわずか２つでした。「来年もこの調子だと奨学金を止める」
と告げるための面接にも呼ばれました。
そんなころ，母親が給料のほとんどを私に仕送りしていることを知り，
私は情けなくなって泣きました。

「こんな生活のために母親を働かせてはいけない。何のために上京させ
てもらったのか。」

そう気づくと，私はギャンブルとアルバイト先をきっぱりやめました。

そして，「もう絶対に道草はしない」という決意で，両親に２年分の受
験予備校代約７０万円をお願いしました。両親は「頑張りすぎなくてい
い。応援する。」とだけ言って，快くお金を出してくれました。

それからは，勉強に専念し，友人と会うのも月に２〜３回くらいという
孤独な受験生活を２年間続けました。親への申し訳なさだけが自分を奮
い立たせていました。

その後，結局，法科大学院に進学しないと受験が難しい制度に変わった
ため，さらに親に迷惑をかけることにはなりました。それから２年間の
大学院生活を経て，浪人せずに司法試験に合格することができました。
親にこれ以上の負担をかけなくて済むということが誇りでした。

失うものがないときの開き直りも重要ですが，人は守りたいものがある
ときに限界を超えたパワーを発揮できるのかもしれません。だから，私
はいつも守りたい人や信念を持ちながら日々を生きようと思うのです。



□■　　模擬裁判　その後　　　〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
■□────────────◆◇　　総務委員会　斎藤祐次郎　◇◆
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　８月例会で行いました模擬裁判について、その後に裁判官が行う評議
について、中川会員が「模範評議例」を作ってくれましたので紹介しま
す。
　
　皆様が将来、裁判員に選ばれますと、このような評議に加わることに
なりますので、是非読んでみてください。
　かなり力作ですので、読まなきゃ損ですよ！


笠間被告人が「僕はやってない！！」との叫びを残して退廷した後，
審理は終結し，裁判官３名は１週間後の判決言渡日までに評議をするこ
ととなった。

〜評議室にて〜

(齊木)
原さん，渡邉さん。笠間の件ですが，さっそく評議をしたいのでちょっ
とよろしいですか。
笠間の件の争点は犯人性でした。まず，証明責任を負っている検察官の
主張から検討していきます。
笠間が犯人であることの理由のひとつめは，「相島が奪われたお札と
笠間が持っていたお札が同一物だった」ということでしたね。

(原)
それがどうして犯人だという有力な理由になるのかは，当然研修所で勉
強しましたね。
我々の仕事は，誰も文句の付けようがない論理的な理由で結論を導くこ
とですよ。

(齊木)
もちろんです。
物が奪われてからより近い場所で，より短時間で見つかるほど，犯人以
外の第三者の手に物が渡った可能性は考えにくいというロジックです。

(原)
そうですね。
では，そもそもの前提として，笠間の持っていたお札は相島が奪われた
お札だ，つまり同一物だといえるのでしょうか。

(齊木)
同一物だと断定できると思います。
まず，お札の組み合わせが１万円札４枚，５千円札３枚というところが
一致しています。
そして，笠間はこれを裸のままポケットに持っていて，他に金は持って
いませんでした。
次に，そのうち１万円札１枚についていたホッチキスの穴の位置は，
相島の封筒にお札を合わせてみると，封筒のホッチキスの穴とぴったり
合います。
さらに，笠間は，この珍しい組み合わせの札だけで小銭は持っていなか
ったんです。

(渡辺)
そもそも相島の持っていたお札の組み合わせは，相島本人が言っている
だけなんだけれど，鵜呑みにしていいの？

(齊木)
確かに，相島は球拾いなのにピッチャーだと見栄を張った嘘もあります
が，家賃を準備したときのエピソードを詳しく話せていましたから，そ
こも作り話だと切り捨てるだけの理由はありませんね。相島が奪われた
お札の組み合わせは間違いないと思います。

(渡辺)
まあ，確かに相島のいうエピソードを作り話というだけの事情はないわ
ね。
笠間の持っていたお札の組み合わせが判明する前からそう申告していた
ようだしね。

(原)
お札の組み合わせの一致はそれで断定してよいでしょう。
ただ，組み合わせの一致だけなら偶然の一致で済まされるのでは？

(齊木)
そこで，ホッチキスの穴です。
ホッチキスの穴の位置までぴったりというのは偶然じゃ済まされないで
すよ。

(渡辺)
でも，ホッチキスの穴の一致についても，相島が封筒をホッチキス留め
したときに１万円札１枚に穴が空いてしまったという直接の証拠はある
の？
相島のお札に穴なんて空いてなかったかもしれないじゃない。

(齊木)
それは確かにありません。
ただ，相島の封筒がホッチキス留めされたことは実物があるので間違い
ありません。
そして，相島の封筒の上端にお札を合わせると穴の位置がぴったり合う
んですから，相島のホッチキスで穴が空いてしまったと考えるのが自然
です。

(渡辺)
それは後付けだから論理が逆よ。ロジックとしては破綻していると思う
けど。
相島が無意識に穴を空けてしまうのなら，誰にだってそんなことあるか
もしれないじゃない？

(原)
齊木さんの論理は確かに逆ですね。
ただ，「ホッチキスの穴が空く機会があった」という限度では間違いな
いですので，それがどのくらい珍しいことなのかの問題だと思いますよ。
珍しいと考えるのなら，やはり相島のうっかりで穴が空いたと考えるの
が自然なのでしょう。

(渡辺)
私はあまり珍しいとは思いません。お札を封筒に入れてホッチキスで留
めるなんてよくありますよ。

(原)
この点は，意見が分かれますかね。
では，それをさておくとして，笠間が裸で１万円札４枚と５千円札３枚
を持っていたことはどうですか。

(渡辺)
小銭も無くてその組み合わせの札だけを裸で持っているというのは，
個人の日常的な所持金としてかなり奇妙といわざるをえません。特に５
千円札を３枚も持っている状況は何か特別な事情でもなければそうそう
ありませんし，千円札が１枚もないのも変です。

(原)
では，お札の同一性についての結論を出したいと思うのですが，どうで
すか。

(渡辺)
ホッチキスの穴が相島の札に空いた証拠は不十分だと思いますが，組み
合わせの珍しさと笠間の所持状況の珍しさを合わせれば，さすがにこれ
だけのことが偶然の一致だというのは難しいです。
お札は同一物だといってよいと思います。

(原)
私も同感です。
では，お札は同一物だということで話を進めましょう。
話を戻して，犯行から時間にして２０分，距離にして２キロメートルの
ところで笠間が相島の札を持っていました。これはどのように評価でき
ますか。

(齊木)
笠間が犯行以外の方法でお札を手に入れた可能性を一応考える必要があ
ります。
たとえば，かなり低い可能性ですが，真犯人が犯行直後に買い物をした
店で盗んだお札を使い，たまたま笠間もその直後に同じ店で買い物をし
たときにお釣りとして知らないうちに盗まれたお札が手に渡った，なん
て可能性も理論上はあるわけです。
しかし，１万円札４枚，５千円札３枚なんていうお釣りはありませんか
ら，お釣りの可能性は完全に否定できます。
あとは，真犯人が犯行直後に笠間に金を渡した，つまり笠間からは真犯
人が盗んだ金で返済を受けたという可能性も理論上は考えられます。
しかし，笠間は事件よりも前に７万円を返してもらっていたと言ってい
るので，その可能性は主張されてはいません。
もっといえば，拾った可能性だって理論上はあるのですが，笠間はそん
なこと言っていません。
ですから，たった２０分間で，真犯人から笠間に何らかの原因でお札が
渡ったという可能性は今回は考えなくてよいことになります。

(渡辺)
そうね。ただ，犯行から２０分間で２キロメートルしか逃げていない
犯人って結構神経図太いと思わない？

(齊木)
それはたしかにそうですが，計画的な犯行じゃなかったり，盗んだ金を
すぐに使ってしまって証拠を残さないようにしたかったりすると，それ
ほど変ではないと思います。

(原)
渡辺さんの疑問ももっともですが，犯人がいつも合理的，計画的に行動
するわけではありませんから，それほど奇妙とはいえないと思います。
いつも後先を考えられる人ならそもそも犯罪をしないでしょうからね。
では，笠間以外が真犯人である可能性は考えられないという暫定的な結
論でよいですね。

(齊木)
次に，「犯人は白い長袖Ｔシャツの若い男だった」という相島の目撃情
報と笠間の発見時の要望が一致していることは何か決め手になりそうで
すか？

(原)
それはあまり決め手になりませんね。そんなありきたりな特徴の人はい
くらでもいますから。笠間じゃなくたっていいわけですし。

(渡辺)
そうですね。ただ，笠間が犯人だとしても矛盾しないという確認的な証
拠にはなりますね。

(原)
そのとおりです。
しかし，相島の目撃はとっさのことですし，知らない人の服装なんてよ
ほど珍しくでもない限りきちんと覚えられる方が珍しいです。
私は相島の目撃情報は鵜呑みにできないと思っています。
ただ，どちらにせよ結論を左右する証拠にはならないので，これ以上厳
密に検討するまでもないでしょう。
こうやって結論に影響のない議論を省いていくというのも重要なロジカ
ルシンキングだと思いますよ。

(齊木)
そうですね。
では，最後に，笠間が犯人だという暫定的な結論を揺るがすような事実
が弁護側から主張されていないかを検討します。
まずは，指紋がないことです。セカンドバッグや封筒に笠間の指紋がな
いというのです。

(渡辺)
指紋っていつも必ずつくもの？

(齊木)
そうじゃないんですか？

(原)
指紋は必ず付くとは限りません。触った物の材質で全然つきやすさが違
います。
そして，指紋がついたとても，完全にきれいなまま残っていなければ指
紋鑑定はできません。指紋が擦れるなどして崩れていたらもう鑑定はで
きません。
日本の指紋鑑定は最低１２箇所の特徴点の一致があって初めて「同一指
紋検出」という鑑定をすることになっています。

※鑑定方法をわかりやすく解説したＨＰとして
　「斉藤鑑識証明研究所」
　(http://www.kanshiki.com/about/kanteihouhou.html)

余談ですが，人間のシリアルナンバーとでもいうべき判定方法としては，
歯形，指紋，ＤＮＡなどがあります。これらは，?世界に同じものはひ
とつしかない，?その人が一生変わらずに備えている，?判別手法が確
立できる，という条件を満たしているものなのです。

(齊木)
原裁判長，勉強になりました。
でも，これは個人的な知識であって証拠がないのに取り扱って良いので
すか？

(原)
個人的な知識ではありません。
「指紋はいつも残るわけではない」という知識は裁判所に職務上蓄積さ
れた経験則なので，証拠がなくても使ってよい常識の部類に属すると考
えられています。
さて，話を元に戻すと，セカンドバッグなどに指紋がないことは「それ
を触ったことがない」という証拠にまではならないということです。
指紋が偶然付かないことや擦れて消えることがいくらでもあるからです。

(齊木)
そうなりますね。
笠間が友達から金を返してもらった残りとして札を持っていたという話
はどうでしょう。

(渡辺)
それが確かに本当だったら，やはり相島の札と同一物だったというのが
少し怪しくなってくるわね。
本当だったらね。

(齊木)
笠間の話は，証拠もないですし，普通じゃありえないことが多すぎて作
り話の可能性が高いです。
友達の名前をひとりも言えなかったり，その日の行動も確認がとれない
ような場所ばかりで抽象的です。
友達から返してもらった金だというストーリーを信じるのは無理です。

(原)
そうですね。
笠間の行動が他の証拠で裏付けられているならまだしも，話があいまい
すぎて信じるのは無理があります。おそらくすべて作り話でしょう。
これがもしも犯行時間の直後に友達から金を返してもらったという話な
ら，「真犯人がたまたま金を貸していた友人で，それを知らずに受け取
った」なんていう可能性ならありえたかもしれませんが…。
ただ，あくまで犯人の認定は検察官の証拠によってするのですから，
「笠間が嘘をついているから犯人である」という判決文は間違っても書
いてはいけません。
齊木さん，原稿作成は任せましたよ。
私は家に帰って飲みたい酒がありますので…。

齊木裁判官は，判決書の下書きを作り，渡辺裁判官と原裁判長のチェッ
クを受けた。
審理の４日後に判決書は完成した。
審理の１週間後，予定通り，判決言渡期日が開廷された。
裁判官３名は法壇につく。

(原)
被告人は証言台の前へ。
(笠間，証言台の前へ進む。「もしかして無罪とか言わねーかな」とい
う不安と期待の表情をしている。)

(原)
それでは被告人に対する強盗致傷被告事件について，判決を言い渡す。

主文
被告人を懲役２年６月に処する。

主文は以上です。
被告人が犯人であると認定した理由を説明します。
(齊木が評議の内容をロジカルにまとめた判決文を読み上げる)

次に，量刑の理由を述べます。
本件は，ひったくりの犯行である。
被害金額も多く，相島に与えた怪我も軽くない。
相島も厳しい処罰を求めており，地域に与えた不安も軽視できない。
また，被告人は不合理な弁解に終始し，反省の色が見えない。
そうすると，被告人に最大限有利に考慮しても，主文程度の実刑は免れ
ないところである。

判決は以上です。

この裁判は有罪の判決です。
判決に不服がある場合には１４日以内に高等裁判所宛の控訴状を本裁判
所に提出すれば控訴ができますので，あなたに伝えておきます。

それではこれにて閉廷。

ＴＨＥ　ＥＮＤ


〓〓青工会活動　今後の予定〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
 
１１月１４日（木）〜１６日（土）
　　　時間　ＡＭ１０：００〜ＰＭ６：００
　　　　　　（最終日１６日はＰＭ４：００終了）
　　　　　　例会日１６日（土）ＡＭ９：００受付
　　　　　　ＡＭ１０：００第１部親子ものづくり体験教室
　　　　　　ＰＭ　０：３０第２部親子ものづくり体験教室
　　　場所　アイメッセ山梨（甲府市大津町２１９２−８）



１２月１４日（土）　１２月例会
　　　

……………………▼△▼△▼　編集後記　▼△▼△▼……………………
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
今年も残すところあとわずか、毎年が本当に早く感じてしまいます。
平成２５年と２０１３年の響きにやっと慣れてきたと思ってたのですが
・・・。

今年中にまだまだ出来ることもありますので悔いのない平成２５年と２
０１３年にしたいと思います。

最後になりましたが、原稿依頼等ご協力いただいた皆様、ありがとうご
ざいました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　深澤　忍

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